あなたはこのフレーズを使われたことはないだろうか。
「なに?怒ってんの?」
喧嘩が行われる前の段階でよく使われるこの言葉
僕はこの言葉が大嫌いだ。
その理由はこの言葉のずるさにある。だいたい、この言葉を使うシチュエーションでは、相手はこちら側が怒っていることを把握しているのだ。
(経験上もしも、相手がなぜ怒っているのか分からないのならば、なにか悪いことをしたかどうか聞くというように探りを入れながら聞いてくる)
それにもかかわらず、この言葉を使って聞いてくる。
それはなぜかというと
この言葉は、こちら側の怒りの感情を表に出させる為に、もしくはあえて「怒ってないよ」と言わせるために
「なに?怒ってんの?」
というフレーズを使うからである。
「何?怒ってんの?」が使われる条件とそれへの対応
あなたは今、今にも怒りが爆発しそうな状態であるとしよう。
そして、相手がこの言葉を使うシチュエーションは
- こちらのことを下に見ている or 舐めている
- どちらかに非があるというよりかはどちらにも非がある or もしくは相手は自分の非を認めていない or こちらに非がある
といった状況下であるとする。
(基本的にこの言葉は挑発の面がある為、相手が不利な場合は使われないことが多い)
その時にこの言葉を使われた際にあなたが取れる行動は三つだ。
- 「いや怒ってないよ」と怒りつつも感情を沈めて対応
- 「怒ってるよ」と怒りを認める
- さらに怒りを高め、むしろより攻撃的になる
多分、この記事を見に来てくれた方のほとんどが1の対応を取ってしまうのではないだろうか。
「なに?怒ってんの?」といわれて素直に2、3の対応が取れるのならば、この言葉の罠には、はまらないからだ。
「なに?怒ってんの?」という言葉のずるさ
上の項目では、「なに?怒ってんの」といわれた際に考えられる対応について例を出したが、あなたはどれに当てはまっただろうか。
僕は、ついつい1の対応を取ってしまいがちになり、その後に怒りを認めればよかったと思い返すことがある。
しかし、「怒ってないよ」と明言してしまった時点で一気に喧嘩はこちら側の不利になる。なぜなら、自身の怒りを自身で否定してしまった以上、そこからどう持ち込んでも自身の怒りは表現できないし、言った後に訂正しようとしてもそれは相手にとって上げ足の材料になってしまうからだ。
では、なぜついつい自分の怒りを否定してしまうのだろうか。
それは、この言葉が人が素直に怒りを表現できないことを利用しているからだ。
人は基本的に群れを成し、社会を形成して生きる動物であり、そこからあぶれてしまうような行動は取らない習性がある。そしてこの傾向は、大人になるにつれて強くなっていく。だんだんとその場でうまく取り繕うために感情をコントロールするようになるのだ。
ここで言いたいことは感情のコントロールが悪いということではなく、私たちは自分の感情をコントロールすることを習慣化しているということである。
感情のコントロールが習慣化されている社会では、自身の感情を表にさらけ出して表現することは、恥とされている。
(よくクレームを入れるような人がみっともないとされていたり、「あいつ泣いてるぜみっともない」なんて言ってからかう子供がいるのはこの文化のせいだと思う)
特にこの文化の代表格は「大人になりなさい」という言葉だ。
自分が理不尽に感じたことに対して、抗議をしようとすると「大人になりなさい」なんて言葉を返されることがある。
この言葉の真意は「自分のことだけじゃなく、群れ全体もしくは社会全体での利益をかんがえなさいよ」という意味なんじゃないかと思う。
話がそれたが、結局伝えたいことは『成熟した社会では感情を表に出すことは恥とされていて、私たちは、成熟すればするほど感情をコントロールする傾向が強まるということだ。』
そして、感情をコントロールする傾向が働くと本当は怒っているのについ反射的に、
「なに?怒ってんの?」という言葉に対して
「いや、怒ってないよ」と返してしまい、自分の怒りを否定してしまうのだ。
これが、この言葉のずるさの仕組みなのではないだろうか。
(反対意見も聞きたいので他に意見があったらコメントをしてくれ)
ただ、もしも相手への怒りよりも優先しなければならないことがあるのであれば(仕事を円滑に進める為等)、怒りを鎮めるという行為は間違っていない。
しかし、自身の怒りや正当性を主張しなければならないときだってあるはずだ。
特に、この言葉が使われるシチュエーションを思い出してみてほしい。
- こちらのことを下に見ている or 舐めている
- どちらかに非があるというよりかはどちらにも非があるか、もしくは相手は自分の非を認めていない or こちらに非がある。
そう、この言葉は挑発なのだ。
そしてまんまと相手の罠に対して、反射的に引っかかって相手の思い通りにされてしまうことが僕は最高に悔しい。なので次の項目で対策を考えてみた。
対策
本気で対策を三つほど考えてみた。
対抗策①
一つは、シンプルに自分の怒りを認めることだ。
自分の怒りを主張する上で、自分の怒りを認めないということはできない。ただ、意見を主張する上で、頭に血が上っていてはしょうがない。一度落ち着いて相手にどんなことによって気分を害したか説明し、どんな気持ちになったか、どうしてほしいかを説明し謝罪を申し入れよう。この時重要なことは、いかに説得力を持たせるかだ。
たとえば、待ち合わせ場所に相手が大幅に遅刻してきたにもかかわらず謝らなかった。
ここで、喧嘩になり相手が「なに?怒ってんの?」と聞いてきたとする。
これに対して
「あなたが遅いから、怒ってんの!あやまって!!」なんて返しでは、説得力はないだろうし、相手との溝も深まるばかりだ。
ここで重要なのは、どうして怒っていてなぜ気分が害されたか、どんな気持ちになり、どうしてほしいかを説明することだ。
どうして→あなたが遅いせいで 等
なぜ→時間を損した、行きたい場所に行けなかった、寒かった、等
どんな気持ちになった→焦った、心配した、悲しかった 等
どうしてほしいか→何かおごってもらう、違う機会に埋め合わせをしてもらう、罰金をはらってもらう、罰ゲーム、次からどうするか提案させる 等
人は群れから外れる感情を表に出すことを嫌うのと同時に、物事の道理から外れることを良しとしない。なぜなら、物事の道理から外れることは社会からのずれを生じさせるからだ。あなたの言葉に道筋が通っていれば相手を謝罪させることができるだろう。
対抗策②
二つ目に思いついたのは、質問によって相手に自分の怒りを自覚させたうえで、相手への報復材料を引き出す方法である。
まず、相手の
「なに?おこってんの?」に対して、
「なんでそう思ったの?」と返す。
そうすると、相手は何らかの理由をつけてそう思った理由を返してくるだろう。
そうしたら、次は相手に
こんなこと(相手にされた怒りの要因)をされたらあなたはどんな気持ちになるか聞く。
素直な相手であれば、そこで非を認め謝罪をして問題は解決である。
しかし、ひねくれた相手であれば自分は気にしないと言うだろう。そうなった場合、そこですかさず、相手に次からは自分も同様の対応を取るということを伝えることで報復の材料とすることができる。
この方法は、ひねくれた相手に対して報復できるというメリットを持つが、その一方で相手が本当に気にしない場合は意味をなさないので使いどころを選ぶ必要がある。
対抗策③
三つめは、周りに対して全力で被害者を演じるというものだ。
あなたが相手と言い争っているときに周りに他の人(両者の知人であるほど効果が見込める)がいる場合、大げさに悲しむまたは泣き崩れよう。
(この時怒りの同意を求める方法もあるがその場合はうっとおしく思われる場合もあるので、被害者を演じるほうが都合がよい)
そうすれば、相手はたちまち悪者として扱われるようになる。
前の項目で人は、社会から外れないように感情をコントロールすると書いたことから、大げさに悲しむというのは書いてあることと逆だと思う方もいるかもしれないが、社会から外れるという面で見た場合に外されるのは社会にとって害となるもの、つまり悪者扱いをされる側である。
つまりこの作戦は相手の社会から外れさせる罠に対してカウンターを仕掛けるというものである。
以上3つほど対抗策を考えたが、一番現実的で生産的なものは一つ目のシンプルに自分の怒りを認めることだろう。また、この対抗策であれば感情をむき出しにするわけではないので、「大人になりなさい」なんてことも言われづらいと思うし、感情をコントロールしてしまうという傾向に無理に逆らう者でもないから使い易いはずだ。
終わりに
ここまで偉そうに対策等を長々と書いてきたが、実際のところは僕自身も怒ってしまうと感情をうまく伝えられなくなってしまうし、ついつい反射的に「なに?怒ってんの?」に対して「いやおこってないよ!(怒り)」と返してしまうことも多い。
しかし、そこで反射的に返さずにあふれ出しそうな怒りを静かな怒りにかえて道理を立てて伝えられれば、生産的なコミュニケーションができるのではないかと思って、記事を書いた。そして道理を立てて感情を説明するというのは、率直に相手に気持ちを説明するにはとてもいい方法である。慣れてきたら、「なに?怒ってんの?」と言われてしまう前にあなたの気持ちを合理的に説明できるようになるといいだろうし、僕自身もそうありたい。
もしも、一人にでもこの記事が役に立って感情をコントロールし、
「なに?怒ってんの?」を打ち倒すことができたのならとてもうれしいことである。
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