※感想でネタバレしているところもあるので、苦手な人はブラウザバック推奨です
皆さんはフィリピンパブってどんなところか知っていますか?
僕は大学生ということもありよく知りませんでした。
そして先日、友人がフィリピンパブに行って楽しかったという話をしていて、
その後
「フィリンピンパブって結局何するお店なんだ??」
と思い、調べてみたところ、この「フィリピンパブ嬢の社会学」が検索に出てきて、読んでみてイメージがつかめました。
どんな話?
「アイシテルヨ~」の笑顔のかげに、凄まじい人生があった。フィリピンパブを研究するうちに、あるパブ嬢と付き合うようになった筆者は、その奴隷同然の暮らしを目の当たりにする。月給6万円、偽装結婚、ゴキブリ部屋に監視付、休みは月に2回だけ……そしてある日、彼女に懇願されて、雇い主のヤクザのところに、なぜか乗り込む羽目に! 前代未聞、ノンフィクション系社会学。
新潮社ホームページより引用
普段は意識しないのですが、やっぱりプロの人が書く紹介文ってすごい・・・
読んだ後なら、分かるのですがかなりまとまっています。
ただ、もう少しだけ詳しく紹介しますね。上の文章で満足なら飛ばしちゃってください!
始まり
この話は、名古屋在住の大学生(以下中島さん)が修士論文にフィリピンホステスのことを取り上げようとするため研究するところから始まります。
中島さんは、大学のゼミ活動の活動を通じてフィリピンの方たちのやさしさや人生観に触れフィリピンのことが好きになったそうです。
そして、大学院に進み、名古屋にフィリピンパブが集中していること、そこで働くホステスは偽装結婚によって来日しており、それには暴力団が裏で関係していることから、フィリピンパブを題材にしたいと話したところ、面白いかもしれないといわれ研究を始めます。
パブ嬢との出会い
その後、研究していくうちにフィリピンパブ嬢のミカさんと出会います。
ミカさんはまだ25歳と若く(フィリピンパブは高齢化が進んでいる)研究を始めていくうちに、二人は惹かれあっていきます。
ただ、そこには大きな障害がありました。ミカさんはヤクザによって雇われておりヤクザ側から見ればミカさんは商品です。商品に傷がつけば、ヤクザは何をするか分かりません。二人はヤクザにばれないように密会をしていきます。
さらに二人には時間の制限もあります。
ミカさんは偽装結婚をすることによってビザを得ているので、ビザが切れてしまえば帰国することになってしまいます。
ただ、中島さんと結婚しようとすれば今度はヤクザとの相手が待っているというジレンマを抱えつつ、危険と隣り合わせの世界で恋をすることになります。
(出会ってはいけない二人ってやつですね!)
ヤクザへの殴り込み!?
しかし、付き合っていくうちに中島さんはミカさんが、週休二日で月給六万円さらに部屋は監視された状態という過酷な労働環境で働かされていることを知り、ヤクザに対しての悪い心証を持つようになります。
そこへ、ミカさんからヤクザと話し合ってほしいという相談をされ、恐怖心を抑えつつ二人はヤクザのもとへ・・・・
二人は無事に帰ってこれるのか、そして結婚することはできるのかっ!!
というところまでが、本の紹介部分ですね!
感想(※ここからネタバレあり)
読んだ感想としては、自分の知らない世界が広がっていてとても驚きました・・
そして、この小説めちゃくちゃ面白いです!!面白すぎて一日で読み終わってしまいました。
この小説の素晴らしいところは3つあります。
リアルな描写
一つは当時の中島さんの心の動きやその時の経験が、よりリアルに描かれているところです。
(編集者さんのあとがきをみたら、やはりそういったつくりを意識していたみたいです!)
ミカさんと近い関係になるまでのいきさつでは、すぐさま仲良くなるわけではなくそれぞれの文化間の違いが描かれ、中島さんの葛藤がリアルに描かれていました。
他に印象的なシーンは、途中であったミカさんとの密会の合間にヤクザに見つかってしまうシーンや、最後のほうであったヤクザと話をしにいく場面です。
この場面では、中島さんの心臓の鼓動が早くなる様子や手が汗ばんでいく感じが直に伝わり、読んでいる自分の心臓の鼓動も早くなっていました。
フィリピンパブの実態が詳しく描かれている
二つ目は、中島さんが研究の対象としていただけあってホステスがどのようにして来日するのか、そしてなぜ現在では偽装結婚による来日が主なのかということや、フィリピンパブを利用する客層やホステスたちの暮らしが詳しく描かれています。
僕の家の近くにもフィリピンパブがありますが、実際何をやっているのかもわからず、またどうやって従業員を連れてくるのか知らなかったので、自分の世界が広がりました。
フィリピンに対して全てプラスのことを書いているわけではない
作中で、中島さんとミカさんはミカさんの家族のもとへ訪問するシーンがあります。
このシーンでは、ミカさんは家族だけではなく、親戚からもお金をたかられてしまいます。
しかし、だからといってミカさんは彼らを追い払うわけではなく、むしろ「家族同士では助け合わないと」といってお金を渡そうとします。
借金をしてでも家族にお金をあげようとするシーンや、それだけ尽くしてもお金がないと分かると親戚が手を返すような態度を取るシーンでは、中島さんはフィリピンの文化に対して有る程度のルールが必要ではないかと考えていました。
(文化の違いは難しい・・・)
しかし、こういったマイナスの描写が、本書のリアリティをより強くし読んでいて現実味を強くかんじることができました。
まとめ
全体的にとても面白い本でした!
それを構成しているのは、飽くなきまでのリアルな描写で、これによって小説の世界観を身近に感じることができます!
また、フィリピンが好きな作者の中でも、フィリピンのすべてに賛成しているというわけではなく、自分の中で境界線を引いたり、ルールを作っていかなければならないといっているシーンでは、文化が違う者同士が付き合う難しさが描かれています。
しかも、ただの恋愛小説ではなく日本に来日するフィリピンパブ嬢の問題についても触れていて、学区術的に見ても面白かったです!
小説としてみても学術的な面でみても素晴らしい本です!!
下にアマゾンのリンク張ったので他の人のレビューが気になった方はどうぞ!